みなさんこんにちは。ついに私にもコラムの順番がまわって来てしまいました。
まっずいコーヒーを飲みながらこのコラムを書いています。文化構想学部・文芸ジャーナリズム論系2年の女です。

Re:ALL委員が各々の好きなモノについて、熱弁を奮っているこのWEBコラム。文字群が飛びかかって来そうですね。しかし、誠に残念なことに、私には声を大にして「これが好きだ!」と言いたいモノが思い当たりません。

たいていの人って、好きなモノくらいありますよね。私も20年間、世の中と人並みに向き合って生きてきたはずの一人の女です。コラムで書きたい内容がないからって、もちろん世の中に無関心に生きている訳ではないし、「好き」という感情を持ち合わせていない訳でもありません。
ミュージシャンで言えば、椎名林檎と吉井和哉が好きです。アイドルなら、道重さゆみが好きです。食べ物ならシメサバ、飲み物ならビール、お菓子ならグミ。皮製品や0.7ミリの油性ボールペンも好きです。まわりの人にも「好きだ!」という感情を、非常に分かりやすく垂れ流しにしています。ただ、「1番」が決められないだけなのです。「好き」における器用貧乏です。

しかし、せっかくの何でも書いて良いWEBコラム(たぶん)なのに、「器用貧乏なのでひとつに決められません。お伝えできる程のことも見当たりません」、というのではそれでお終いですね。それはちょっと寂しいですし、そういう訳にもいきません。ですので、みんなの言う「好き」とは、ちょっと手触り・耳障り(?)の違った「好き」を、腹をくくって(小声で)お話しようと思います。

器用貧乏というからには、私はそれなりに気が多く、たくさんの「好き」を持ち合わせています。その中でも、他人に伝えるのが憚られる「好き」がひとつあります。

「エログロ」が好きなのです。

文字通り、エロくてグロテスクなモノです。

文化構想学部という学部に在籍する以上、授業の先生や友人、先輩や後輩に、「好きな作家は?」と尋ねられることがままあります。そこで、「えーっとね、江戸川乱歩と谷崎潤一郎、夢野久作、舞城王太郎、三浦しをん、中山可穂……」なんていう怒涛のラインナップを、何の躊躇いもなく挙げてみたら、相手はどんな顔をするでしょう。そして、自分のことをどんな人間だと認識するでしょう。即刻、歪んだ性癖の持ち主だと確信されること間違いありません(少なくとも私の経験上は)。
まわりの人間の反応が気になる。引かれたらどうしよう。公にするのは恥ずかしい――。そんな、他人に伝えるのが憚られる類の「好き」なのです。

私は、好きな作家を聞かれたら、前述の作家たちの中に「恩田陸」「西加奈子」「小川洋子」などなど、適宜あたり障りのない作家を交えることにしています。相手にどう思われるか気にしているからです。20歳女性の自意識が垣間見える瞬間ですね。本屋のレジでお会計をするときも同様です。夢野久作と小川洋子、といったかんじの組み合わせでカモフラージュするのです。
(今挙げた3人は実際にとても好きなので、)「カモフラージュ」と言うと若干の語弊があるように思いますが、「なんだかヤバそうな本を買い込む人」という印象を持たれるのを避けるために、一緒に買うのです。中和です。

だって、「エログロ好きなんだよね」って前面に押し出してくる女の子って、そもそもどうなんですか。
世の男性諸君。女の子に「会田誠展、一緒に行こうよ!」と誘われたとしたら、「……」となってしまいませんか。私だったら、なってしまいます。私が男性だったとして、東京タワーで女の子とデートしているときに、彼女が「ねえ! ここ(ろう人形館)入りたい!」とか言い出して、嬉々として中世の拷問の様子をかたどった蝋人形を眺めていたりしたら、これまたきっと「……」となってしまいます。紳士淑女の皆様、どうですか。迂闊に「エログロ好き」を提唱しないほうがいいですか。しないほうがいいですよね。

私は、自分の中に「世間体」という概念が在る以上は、大声で「エログロ好き」を提唱しないと思います。この感情は、AVやアダルト雑誌を作る会社に就職が決まって、親にうまく言い出せず悶々としている人の心境と近いものだ、と勝手に確信しています。AV女優さんって、堂々と「ママ! 手に職つけたよ!」とか言えるんですかね。常々疑問に思っています。まあ、AV女優さんはともかくとして、私は親に性的事柄を話せる人間の神経が理解できません。私なんて、中学時代に姫野カオルコの「ツ、イ、ラ、ク」を読んでいるのを母に咎められて以来、親の前で性の匂いを醸し出さないよう細心の注意を払っているというのに……。

唐突ですが、私はBLに耐性がありません。それと同じように、エログロに耐性のない人間も、世の中には大勢いるでしょう。私は、自分の「好き」を他人に押し付ける気なんてさらさらありません。ただ、こういうモノが「好き」な人もいるのです。エログロを許容してほしいとは言いませんが、こういうモノを好きな人もいる、ということを許容して欲しいのです。それだけです。

大声で言えない「好き」も存在するし、大声で言わなくても「好き」は存在します。

収拾が付かなくなってきたので、強制的にシャットダウンします。ちなみに私のPCのデスクトップは道重さゆみです。エログロ画像ではありません。

<—以下エログロ—!>
最後に、少しだけエログロの具体的な話をします。興味のある方だけ読んでください。

*ろう人形館
http://www.tokyotower.co.jp/foottown/3f_01.htmlhttp://www.tokyotower.co.jp/foottown/3f_01.html
コラムではエログロの話で登場させてしまいましたが、エログロのろう人形しか置いてない訳ではありません。ビートルズやマリリンちゃんもいます。なんと写真撮影OK!エログロの好き嫌い問わず、ぜひ行ってみてください。私は行きたい。

*谷崎潤一郎
http://blog.livedoor.jp/seibundoh_wasedasta/archives/4294818.html

ぐぐったらなんと早稲田駅前の成文堂書店のブログが。
フェティシズム小説集、マゾヒズム小説集、犯罪小説集というラインナップです。しかも、マゾヒズムの表紙絵は、かの有名な中村佑介さんによるものですよ。素晴らしい。でも、気になることが一点。フェティシズム小説集の帯の「もっといけないことおしえてほしい?」ってコピー、若干違うのではないだろうか…。
余談ですが、書店ではなくヴィレヴァンで購入すると、サブカル系こじらせ文学女子(?)を演出できるかもしれません。

*Dir En Grey
http://www.direngrey.co.jp/
1997年結成のヴィジュアル系バンドです。楽曲は一貫して「痛み」をテーマにしており、MVがグロテスクなこともしばしば。放送規制がかかったり、YouTubeで不適切な動画として報告されたりしているのを見ると少し切ない……。けれど、曲によっては本当にグロテスクなので、耐性のない人は控えるべし。エログロがどうこうだけではなく、ミュージシャンとしても好きです。推しメンはベースの敏弥です。
▼たぶんこれが1番話題になったMVかな。閲覧注意
http://www.youtube.com/watch?NR=1&v=5ZZsuJw3Ruc

ここまで書いてふと思いましたが、個人的にエログロのモチーフは女の子のほうがいいですね、断然。だって、綺麗ですもん。別に、男性でもいいっちゃいいんですけどね。この辺はアイドル好き(弱ハロヲタ)と深く関わっていると思います。でも、我らのアイドル道重さゆみに傷をつけるのは、さすがに勘弁してください……。

エログロが好きだと打ち明けるのは、親しい間柄の人間に限られていましたが、このコラムで公にしたおかげで、当分は友人たちにも、もちろん一般の方にもエログロの話をしたりしないと思います。おそらく、こんなに公にエログロの話をする機会など、人生に1回あるかないかでしょう。稀有な体験でした。もう黙ります。小声だろうと大声だろうと、金輪際エログロの話は致しません。自意識!

(小室南美)