この記事はリッこら(http://reallcolumn.ko-me.com)の過去投稿をサイト移転のため、リバイバル掲載したものです。
内容は掲載当時のものであるため若干の違和感があるかもしれません。
ご了承ください。

 

『俺の妹がこんなに可愛いわけがない。』(俺妹)という、ライトノベルを原作とした作品群がある。そのタイトルからもわかる通り、いわゆる「妹モノ」でありながら、一方で「妹モノ」ではないとも言える。俺妹のストーリーの軸は妹ではなく、エロゲーや現代日本のオタク文化のほうにあるからだ。ここで興味深いのは、主人公の妹でヒロインの桐乃は、オタク文化の中に存在するあらゆるジャンルの中でも特に「妹モノ」を好んでいる点だ。一般的な「妹モノ」においては、兄妹間の恋愛が当たり前に起こる。それとは対照的に、「リアル妹」であるところの桐乃は兄に対しては恋愛感情どころか、むしろ嫌悪感を抱いている(ように見える)。兄の京介も同様で、2人は冷戦状態にあった。

私にも、実の妹が2人いる(他に義理の妹がいるわけではない)が、やはり妹に対しては、恋愛感情のようなものを抱くことはない。同じ親から生まれてきたとは言っても、あらゆる点で違いがありすぎる。妹は私と違って運動神経がよく、社交的で、友達も多い。ファッションにも敏感だ。趣味も違えば、話し方だって似ても似つかない。形質的なものに限れば、昔は「(顔が)よく似てる」といろんな人から言われたものだが、年を経るにつれ、特に第二次性徴期を経て、男女の違いが際立ってきたからか、あまりそう言われることもなくなった。
俺妹の主人公たちのように、会話がない、とか、極端に少ない、とかいうことはない。むしろ会話はとても多い。少なくとも、会話を通じてお互いの違いをはっきりと認識できる程度には。
当然ながら、妹のことは嫌いではない。そもそも、私の妹に対する感情は「好き」「嫌い」の2択で割り切れるような単純なものではないが、あえてどちらかを選べと言われたら、当然「好き」である。
だが、その感情は、どこまでも恋愛感情とは異なる。私はそれこそが「家族である」ということなのではないかと考えている。
あまりに見慣れているせいで、小さな変化には絶対に気づかない。恋人同士ならば、女のほうが「どうして気づかないの!?  この、鈍感男!!」と怒って喧嘩になってもおかしくないが、兄妹関係ではそのようなことは起きない。気づいてもらえなくても「あの人はそういう人だからね」で済まされる。そもそも、「妹が小さな変化を兄に気づいてほしい」ということ自体、あまり考えにくい。妹にとって兄は「兄」でしかないのだから。

世の妹いない系男子たちが想像しているほど、現実の妹には夢が持てるわけではないし、兄妹関係は情熱的なものではないのだ。

俺妹の兄妹関係は、ストーリーの進行とともに徐々に変質していく。初めは「同じ家に住んでいる他人」だったものが徐々に「兄妹」へ。
「兄妹」、それは当たり前の関係のようで、最近では案外、そんなこともないのかもしれない。私が中学高校の頃は――当時はみんな思春期だったからというのもあるだろうが――、周りと比べてみても、私たち兄妹の仲の良さはかなり珍しいものだった。具体的にどれくらい仲が良かったかと言えば、一緒に買い物に行ったり、カラオケで歌ったりといったことを普通にしていたぐらいだ(趣味も嗜好もまったく合わないので、それほど頻繁にやっていたわけではないが)。その仲の良さは、しかし、きっと「兄妹」だけがつくり上げたものではない。私には他に姉や、弟もいる。喧嘩をして、いったん兄妹関係が断絶しても、姉を経由するなどの迂回路が必ずどこかに存在し、関係の修復を手伝ってくれる。俺妹においても、主人公兄妹の関係を変質させたのは彼ら自身ではなく、周りの人間、特に「友達」だ。

俺妹の「兄妹」への切り口は斬新なものだった。しかし、それでも俺妹はラブコメの色が強い。2人の関係が無事「兄妹」へと変わっただけでは留まることができずに、その先を目指しているようなところが感じられる。妹と、妹ではない別のヒロインの存在が並び立つ形でストーリーを展開させていくようになるのだ。それはもはや「妹モノ」以外の何物でもない。
上でも述べたが、兄妹関係は恋愛関係ではない。前でも後ろでもない、別ベクトルへ進んでいる。その意味で、俺妹のアプローチはいささか中途半端だったように感じる。

兄妹関係にスポットを当てた作品としては、一迅社のぱれっとonlineで連載されている『妹はいいものだ』という4コママンガが絶妙な具合にリアルで良い。Twitterでも毎日一本ずつ更新されているので、ぜひ一度読んでみてほしい。


『俺の妹がこんなに可愛いわけがない。』の主人公兄妹(原作1巻より)。妹の桐乃は現在「タレント企画」として公式Twitter(@kirino_kousaka)を持つほか、実際に公式サイトから「お仕事」の依頼を出すこともできる。


『妹はいいものだ』のヒロイン「はるな」。

(ソトムラ)